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『うつの正しい治療 間違った治療』の感想
自分や家族が罹ったとき「心の名医」に巡り会える恰好の解説書
北誠2009/08/15
http://www.book.janjan.jp/0908/0908108565/1.php
「人間は、心を持っているからうつ病になります。心の病は、心の治療からしか始まりません」、「うつ病は必ず治ります」を基本に展開されていく本書の構成は、患者の家族として、まず安堵感を覚える。
そして、「うつ病」を心の病として対応する医師が減少している要因に、人的資源と費用のかかる精神療法や心理カウンセリングを行う精神科医や診療内科医を経済的に追い込む国家行政がある。歴史の中に悪徳治療器として消えた電気ケイレン療法が台頭し、それを公共放送が後押しし始めた事を上げ危惧し、「心ある医師よ!立ち上がる時が来たのではないでしょうか」と、著者が訴えていることに、本書の方向性が伺える。
本書の帯で「うつを本当には治す方法とは?」と投げかけているが、うつ病発症の原因が競争社会などの社会そのものの在り方に根源的な問題があることに、1人でも多くの人に気付いてもらうことが大切である。自殺者の防止策を国家政策として強調しながら、一方でうつ病の者の生産促進を行っている国家行政を変換しなければ、本当に治す方法で治療する医師に巡り会う事は困難ではないかと、読了後強く感じた。
筆者が本書を読んだきっかけは、妻がうつ病と診断されてから6年余りが過ぎたなか、現在診療を受けている心療内科の医師に、本書の著者も悪い例として指摘しているように、カウンセリングを行わず、目を見て話をしないなどという態度が見られるため、治療方法に疑問を持ち始めたことだ。妻も2週間毎の診療日が近づくに連れて体調を崩す日が続ている時に、ちょうど本書が目に止まりこの欄に応募した。
経過は、7年前頃から更年期障害ではないかと産婦人科に通院していたが、たまたま出産で手の空かない医師の代診をした心療内科の医師に、パニック障害と診断されたのが発端である。しかし、仕事量を減らすように忠告を受けながらも、個人営業と無知のためもあって、全く動けなくなるまで頑張ってしまった。
その後、医師の話に耳を傾けるとともに妻に隠れてうつ病の本を読んだり、ネットで調べたりしたが、あまりにも多種多様な治療方法が述べられているので、医師を信頼して治療を続けるしか無いと考え、その後治療方法について余り調べなくなっていた。
先に述べた理由で医師を替えようと模索していたのだが、現在の心療内科の医師も2年前引っ越した時に、5軒目に辿り着いた医師である。
そこに至るまでには、新患は受け付けていません・新患は2ヶ月先の診療になります・待合室が余りにも狭いのでいや(妻の言)・午前10時の予約をし問診を受けた後なかなか呼ばれないので、受付に尋ねると、「午前の診断は終了しました。午後の診療に成りますが新患は最後に診療しますので何時になるか分かりません」ということが続いた。そしてやっと「必ず治りますからね」と言って頂いた現在の医師に辿り着いた経過がある。
また、著者が「はじめに」の冒頭で、「医療従事者ほど精神疾患に対する偏見差別意識が著しい」と指摘しているように、他の病院で診療を受ける時に服用薬を提示すると、「こんなに薬を飲んでいるのか」との度々の言に妻は傷つけられ、足を踏み出すことが出来ないでいた。
以上のように、治療方法を調べる事から遠ざかり、しかし現在の治療方法に疑問を持つものの足踏みをしていた時に、本書は足を踏み出すきっかけになりそうである。
本書を読んで確信を得た事は、昨今うつ病について報道される事が多くなり、うつ病はセロトニン低下による脳の機能障害であるとのこと。模型を使っての解説は説得力があった。「自分に責任がある」と言う妻に、「脳の機能障害だから薬に頼るしかない」と筆者は説得し続けてきたが、著者は、うつ病は心の病と位置づけ、精神療法・心理療法・心理カウンセリングとSSRI(抗うつ剤)など安全な薬剤との併用で治療を行う」としている。
確かに、大きなストレスが掛かった時(生活をしていく上で避けられないと思っている)に発作を起こし自傷行為を行う妻を視て、対処療法だけでなく、病の原因を治療する必要があるのではないかと思っていた。そして、最近良く報道されている「認知療法」に関心を持っていた。
そんな時、本書にあるとおり、専門医の行う精神療法・心理療法・心理カウンセリングが必要であると確信が持てた。
精神科・心療内科の選び方の章で著者は、「薬物療法だけの精神科医にはかかるな」、「うつ病を心の病として対応する10年以上の精神療法の経験者又それを補填するための心理カウンセリング中心(心理検査中心ではなく)の心理療法士が数人常勤している」、などの条件を上げている。
そこで、筆者はこれらの条件をふまえて、ネットで近隣の医師を探してみたが、心理カウンセリングを行っているところは少なく、あっても健康保険適用外で50分4200円では病気で収入減となっている者としては負担が重い。
うつ病を心の病と対応する医師が少ない原因を、著者は、医療費削減の結果、専門医の生活の保障さえ出来ないくらいの安い料金体系になって来ているためであると指摘している。
医療費削減のため、「15分を超えたら即刻退場していただくことになろうかと存じますが、何卒ご容赦を。」とはっきり明言している医師もいる。
参照:診療報酬 ―時間売りの精神科カウンセリング―
第4章、精神療法が出来る医者は心の名医、副題「うつにはその人の人生が積み上げられている!」で、「治療者である心理療法士は眠くなるくらい悩むことがあり、心理療法の経験豊かな先輩が援助しながら心の健康を保ちながら心理療法に臨む」と、紹介しているが、それほど熱心な治療が受けられれば、妻もモット楽に生活できるのではないかと希望を抱ける。
しかし、現行の診療報酬制度は、心理療法士と医師が同じ治療法を行っても、健康保険から医師にだけ精神療法料金が支払われ、10年程度の時間と哲学・現象学・精神分析学などを学ぶ必要のある「現存在分析治療法」を行える医師の診療と法的に決められた5分以上の診療に、同額の精神療法料金が支払われる。
このことで、似非専門医が多いのも致し方ないかもしれないと著者が指摘しているように、著者の言う心の名医は激減していると言う。ここにも、心の病として対応する医者に巡り会う機会を阻む壁が政治的に作られているように思える。その壁は小泉構造改革とそれを標榜する人たちにより、更に厚い壁になってきている事を、本書は知らしめてくれた。
本書は、1章・2章で120ページに渡って、うつ病の多種多様な症状や千差万別あるその対応などを、状態別に治療経過、対策と考案を述べ、見誤りにより病状が悪化した例なども紹介しているので、妻の病状の対応を考える上で大変参考になった。
又、「うつ病は伝染するか?」で、「著者の診療所では、家族そろっての通院が激増している」には、筆者も思い当たる事があり、又専門医でも心の健康を保つための援助を受けるほどのことを家族として支えているのだと考えた時、筆者も少し気が楽になった。
また、電気ケイレン療法が具体的に紹介されていて衝撃を受けたが、これからの妻への治療法の方向性を見いだせた。しかし、その治療を受ける事が困難である事も自覚させられた。
うつ病は、誰でもかかりうる疾患であることを踏まえ、家族・友人・自分自身がうつ病になった時に、心の名医に容易に巡り会えるように、本書を手に取りうつを本当に治す方向の世論を作り、その世論を大きし、政治を変える必要性にも自覚させられた。
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/shakai/top/83-0.htm
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